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最高裁判所第三小法廷 昭和53年(行ツ)54号 判決 1978年10月03日

長野県松本市双葉町二七六二番地

上告人

矢ヶ崎ヶ昭三郎

右訴訟代理人弁護士

中條政好

長野県松本市城西二丁目一番二〇号

被上告人

松本税務署長 新陸夫

右指定代理人

岩田栄一

右当事者間の東京高等裁判所昭和五〇年(行コ)第二三号所得税更正決定等取消請求事件について、同裁判所が昭和五三年一月三一日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中條政好の上告理由について

所論の各処分を適法であるとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を非難するか、又は原判決を正解しないでこれを論難するものであつて、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 服部高顯 裁判官 高辻正己 裁判官 環昌一)

(昭和五三年(行ツ)第五四号 上告人 矢ヶ崎昭三郎)

上告代理人中條政好の上告理由

一、事実関係

(一) 本件は昭和四一年十二月十五日付で松本税務署長が上告人の昭和三六年分・昭和三七年分及び昭和三八年分の所得税について行つた左記賦課処分につきその取消しを求める訴えである。

(二) 取消しを求める賦課処分

(1) 昭和三六年分(更正)

所得金額 金 六〇〇、二〇〇円

税額 金 七三、四九〇円

重加算税 金 三六、五〇〇円

(2) 昭和三七年分(再更正)

所得金額 金一、三九七、二〇〇円

税額 金 二八六、六六〇円

重加算税 金 一〇〇、一〇〇円

(3) 昭和三八年分(決定)

所得金額 金一、八一六、八〇〇円

税額 金 三〇二、四七〇円

重加算税 金 一〇五、七〇〇円

確定税額合計 金 六六二、六二〇円

重加算税額合計 金 二四二、三〇〇円

(三) 上告人は昭和三四年六月二〇日建設業法(昭和二四・五・二四日法律第一〇〇号)所定の登録を経て矢ヶ崎建設の名称を用い松本市において建設業務を単独で開始した一級建築士である処、同じく一級建築士の訴外矢ヶ崎忠実が代表取締役である矢ヶ崎建設株式会社(本店、東京都千代田区)(甲一)が昭和三六年五月六日松本市双葉町二七六二番地に総合工事を目的とする松本営業所を設置(建設業法第十七条の一)したので招聘されて上告人は同法第二六条の一、主任技術者設置の規定により昭和三六年六月一日より単独で矢ヶ崎建設の名称を用いて継続してきた建設業務を廃止し、東京の矢ヶ崎建設株式会社設置の松本営業所長兼主任技術者として就任した。この在職中上告人は東京矢ヶ崎建設松本出張所長兼主任技術者である限り、現行法上、税に関する申告及び納税義務は本社である東京の矢ヶ崎建設にあるものと判断して申告もしなかつたし、納税もしなかつた。

しかし売上利益金は之を計算し八回に合計二、一二三、八四七円及び外に金一〇〇万円を上告人は東京本社え送金している。また帳簿等整備しているのに之を認めず、収益は全部上告人が取得したことになると認定して頭書の通り賦課処分を行つたものである。

二、上告理由の第一点

当該上告人に対して被上告人松本税務署長が行つた頭書各年度分の賦課処分は典型的裁量処分である処何れも裁量権は恣意による濫用に当る違法処分である(行政事件訴訟法第三〇条)。

上告理由の第二点

被上告人は上告人が営業譲渡をしていない点を指摘し松本営業所長兼主任技術者就任は無効だと主張するが、この認定には誤認の違法がある。

上告理由の第三点

被上告人は松本営業所と上告人間の関係が、主任技術者の設置という建設法第二六条第一項の法律関係につきその解釈を誤つている点である。

以上

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